人別システム選定、レンタルサーバーかVPSか

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2017年5月30日 (更新日:2020年7月10日)

木下肇
木下肇

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レンタルサーバーかVPSかーーー「初心者はレンタルサーバー」「熟練者はVPS」という選ばれ方が一般的だが、どういった点が「初心者」「熟練者」に向いていると言えるのか、サーバー選びの選択についてお話します。

個人事業主としてフリーエンジニアをしている木下です。

これからWeb(ホームページ開設)や社員一人一メールアドレスを実現するために独自ドメインを取得してサーバーを選定・立ち上げのお手伝いをすることがあります。
そのとき、 「レンタルサーバーやVPS、クラウド、いまどれを選んだらいいの?」 こんな問いかけをもらうことがあります。
こういうときは、 「今まではプロバイダ契約に付属のホームページ領域とメールアドレスを使っていたから分からないんだ。」 という小規模企業の方やスタートアップ企業の担当者の方からご相談を頂戴することが多いです。
いままで独自ドメインを利用していなかったのが、これから独自ドメインで自社のWebサイトとメールアドレスを運用していこう、というシチュエーションです。
こちらから「どんなサービスがいいですか? と質問しても「正直使ったことがないのだから説明しようがないよ。だから選べない。」と卵が先か鶏が先かの話になってしまいがちです。

レンタルサーバー・VPS・クラウド 運用別比較

サービスは当然たくさんあります、どの会社のサービスにしようかも選び切れないですし、その会社が提供するサービスも複数提供されていることがほとんどでサービスラインナップから選びきれない、ということにもなりがちです。

フリーランスやスタートアップ企業の担当者、他にも業務を抱えていますよね。 中小企業のWeb担当者、中規模の広報担当者、Webコンテンツについてはそれなりの知識を持っていても、Apache、Tomcat、Negix、といったWebサーバーの構築やOS・通信技術といった基盤のインフラ知識は疎いかもしれません。
企業のIT担当者、オンプレミスのIT担当者であれば、どちらかといえば普段の業務からサーバーやネットワークの構築や管理といった業務に取り組んでいるため、基盤(インフラ)の技術には明るいかもしれません。だからと言ってHTML、Perl(CGI)やPHPといったWebコンテンツ側の技術に詳しいのか、といえばそうでないケースも多いでしょう。 本記事ではどんな人がどういうサービスを選択するとミスマッチが起きにくいか、という視点でレンタルサーバーとVPSとクラウドサービスを比較してみます。

※注)本記事では比較のためクラウドサービス・クラウドサーバーは一番自由度の高いIaaSを対象にします。

レンタルサーバー VPS クラウド
月額料金体系

月額が決まっている

月額が決まっている

使った分だけ従量課金される
OS

選べない

契約時のみ選べる

利用中でも柔軟に選択可能

提供形態

サーバーを共用(他の契約者と同居) サーバーは占有、OS外の環境は共用が多い サーバーや通信環境を契約者で占有できる
構築作業量

構成の自由度

通信環境の自由度 何もできない オプションがあることもある 料金内で自由に構成ができる
セキュリティ対策 業者にお任せ プランによるが原則自分で実施 すべて自分で実施する
稼働中のサーバー性能増減 固定されており変更不可 原則固定だが変動できる場合もある 自由に自社の都合で増減ができる

一言にいってしまえば、「自由度と手間はトレードオフの関係にある」といえます。

契約する自社の都合でカスタマイズする手間、カスタマイズした機能やメンテナンス・アップデートを定期的に実行する手間、これらの手間を選択する代わりに自社の都合に合わせた自由度が提供される、というものです。その自由度の範囲がレンタルサーバー⇒VPS⇒クラウドサーバーと順を追って拡大していくイメージですね。

サーバー運用者「スキル別」比較

実際にどのサービスを選ぶとミスマッチが起きにくいか、一番分かりやすい指標としてはやはりスキルが真っ先に思いつきます。

初心者、兼任担当者 =レンタルサーバー、SaaS

自称初心者や別の業務を兼務するようなサーバーの担当者は単機能で絞った方がいいといえます。本来やるべき本業はサーバーの管理以外にあるのでサーバーに何かあれば掛かり切りになってしまうような事態は避けたい、といえます。また、あまり多機能でも使いきれないことが多いので、機能が絞られているために価格も抑えられているレンタルサーバーのほうがメリットは大きいといえます。使わないのに機能の選択肢が多いのはあまりメリットになりません。

熟練、上級者、専任担当者 =VPS、IaaS

これまでサーバーを何台も長年構築・管理してきた上級者にとっては、いざなにかするときの自由度が高い方がいいといえます。
本来やるべき本業がそもそもサーバー管理業務である、という専任担当者の場合、「社内から挙げられる様々な要件に対処することが主業務」であるため、社内のユーザーの要望を実現する必要からも「自由度が高い、選択肢が多い」ことはメリットになります。

これは一般的に良く言われる、レンタルサーバーは提供されるUIの範囲でしか操作ができない、つまりOSやサーバープログラムの設定変更を実施することはできない、一方でVPSはOSから契約者が操作可能(root権限が付与される)ことから、OSレベルでの操作が必要ないユーザーはレンタルサーバーやSaaSで提供される機能だけを使うほうがよい、一方で社内のサーバーを管理していたようなユーザーであればOS設定やサーバープログラムを設定できる方が手っ取り早い、ということがいえます。

「やりたい・やりたくない別」で選ぶ

意外と無意識のうちに理由付けが済んでいることが多いのですが「やりたいかやりたくないか」という視点の区分けも意外と重要です。

サーバー作業は極力やりたくない =レンタルサーバー、SaaS

ひとたびサーバーを使い始めれば、セキュリティ対策やアップデート、ログ管理やサービス監視といった「サーバーが正常にかつ安全に稼働するための作業」が付随してきます。これらはそのシステムを管轄する部署で担当者が実施しなければなりません。ただ、専任の担当者でなく兼務でサーバーの面倒をみたり、サーバー管理者であっても手が回らなかったりすれば、そのサーバーに割ける労力ないことになってしまいます。
サーバーには適切な管理業務があって安全かつ安定的な稼働が約束できるものですが、これをやりたくないケースや事情があってできないケースであれば、「使うことに特化したサービス」であるレンタルサーバーやSaaSを選択するほうがよりメリットが大きいことになります。

サーバーを細かく制御したい =VPS、IaaS

いま使っているサーバーに注文がついた、その時できるかできないかを判断することになります。

ただ、実際に依頼があるまで「どんなカスタマイズを要望されるか」は予想できません。
つまり契約するときに想定していたことでなくてもどうにかしたい、というサーバーを用意したい場合にはOSからカスタマイズ可能なVPSやそもそもサーバーのインストールから実施するようなクラウドサーバー(IaaS)でサーバーを用意する必要があります。
ユーザーや開発者が「○○を○○したいんだけど」と言われたときはサーバーにある程度の自由度がなければその要望に応えることが難しいことがあります。例えば、Webサーバーにコンテンツのアップロードを実施しますがレンタルサーバーではFTPのみとなっていればそれ以外の方法を利用することはできません。
会社のセキュリティポリシーで暗号化されたSFTPやSCPを利用しなければならない、となると、レンタルサーバーでは対処不可能となります。
この点VPSやIaaSではOS設定やFTPサーバー設定を変更することによってセキュリティポリシーに適応することが可能になります。
このようにVPSやIaaSは初期設定がどうあれ、需要に応じてサーバー設定を変更することができます。言い換えると、「どんな要望も実現できるようにする」ためには自由度が高いVPSを契約したりIaaSでサーバー構築から実施したりしておく必要がある、ということです。

FTP over SSL

GMOクラウドのレンタルサーバー「iCLUSTAシリーズ」では、FTP over SSL (File Transfer Protocol over SSL)というファイルを転送するための通信プロトコルがあります
「SFTP」はSSHによる暗号化・認証化で「FTP over SSL(FTPS)」はSSL/TLSによる暗号化・認証化でともに第三者による盗聴 を防止する意味でのセキュリティ対策です。
(出典:「SFTP?FTPS?なにが違う?」)

で、どちらを選ぶの?

私はどれを選べばいいのだろうか?という時にどちらに比重を置くかという点がポイントになってきます。ここまでに紹介した四種類をちょっと分類してみましょう。
縦軸は知識や経験といったスキル全般の多寡を、横軸ではサーバーに絡む作業をやりたくないかやってもいいか、という温度感を表現しています。こう考えると四タイプに分類することができます。

図中の<1>や<3>に該当すれば自分の知識や経験などよりも作業を少なく済ませたい、という点にプライオリティがあります。ここは作業がいかに少なく済むかがポイントになるためレンタルサーバーを採用したほうがギャップは少なく済むといえます。また、VPSやクラウドを採用しなければならないとしても費用を掛けて代行オプションなどを活用して作業を少なく済ませたくなるでしょう。
一方の<2>であれば知識があるからこそあまりサービス内容に縛られることなく、自社で達成したいサーバー環境を手に入れたい、という点にプライオリティがあるといえます。
こういった自身や組織の需要に100%合わせたサーバーを利用するためにはやはり細かなカスタマイズが可能なVPSやクラウドサーバーを採用する必要がある、といえます。
最後の<4>はレアケースと言えるかもしれません。知識・経験といったスキル面はそれほど高くなくても自由度が欲しい、というのは「勉強を兼ねて」というケースが多いように思えます。実際の現場では少なそうですね。

まとめ

今回、VPS、レンタルサーバー、クラウド、いろいろ種類があるけど、私はどれを選べばいいか、の考え方をご紹介しました。

比較軸は、できるかできないか、やりたいかやりたくないかになります。
作業がやりたくない層はレンタルサーバーのように「提供された機能を利用する」タイプが向いています。
自分でいろいろ制御しなきゃいけない場合、VPSやクラウドのような「自由度が高い」タイプが向いています。
ただしいろいろやってみたい層でも知識や経験が少ない場合には、いきなりクラウド環境のサーバーを扱うのではなく、VPSでサーバーに限っていろいろやってみる方がよい、といえます。

サーバーを用意する方法は大きく三種類あり、どれを選べばよいか、という点は「自由度と手間がトレードオフになる」ということを念頭に置いて選定しましょう。必ずしも費用(金額の多寡)はこのトレードオフの関係に比例してくるものではありません。

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この記事を書いた人
木下肇
木下肇
東京/神奈川を中心に、都内中堅企業ではシステム部門の一員として部内インフラ業務に、別の小規模企業ではインフラ全般について管理業務の委託を受けるフリーエンジニア。オンプレミスの企業内インフラからクラウド環境のサーバー/ネットワークまで、OS守備範囲はWindowsからLinuxまで、障害の診断や修復/修理であればソフトからハードまで、幅広い守備範囲で日々お客様の業務を遂行しています。
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レンタルサーバーについて毎日考える、レンタルサーバー会社に勤める有志連合。
レンタルサーバーを使うお客さまと身近に接している10年の経験を元に、世の中にはびこる「危ないレンタルサーバー情報」に一石を投じるべく立ち上がる。
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